エイズに対する素朴な疑問にQ&A方式でお答えします!!!!
後天性免疫不全症候群(エイズ)の原因ウイルスであるHuman Immunodeficiency Virus(HIV:エイズウイルス)に感染しているかどうかを調べる検査です。
HIVに感染すると体内にHIVに対する感染抗体が産生されます。スクリーニング法のHIV検査では血液の中にHIVに対する感染抗体があるかどうかを調べます。
最初にHIV抗体スクリーニング検査法(PA法:ゼラチン粒子凝集反応、EIA法:酵素免疫測定法、抗原抗体検査)で検査を行い、陽性になったものについてはHIV確認検査法(WB法:ウエスタンブロット法)やリアルタイムPCR検査で確認します。
なぜ確認検査をするのかと言いますと、HIV抗体スクリーニング検査ではHIVに感染していなくても検査に使用するのHIV抗原と反応する抗体を持っていて検査結果が偽陽性(ニセの陽性)となる人が通常1000人に2〜3人前後います。スクリーニング検査は、本当の感染者を見逃さないように、検査法の感度を上げていることからニセの陽性反応が発生することは致し方ないことです。従ってスクリーニング検査で陽性の場合は、その陽性結果が本当にHIV感染による陽性か偽陽性かを確認する必要があります。そのために確認検査をします。
現在、全国のほとんどの保健所等で、匿名・無料のHIV検査・相談を実施しています。 しかし、抗原抗体検査やリアルタイムPCR検査は一部の大都市の保健所しか実施していません。 また医療機関でもHIV検査は受けられますが有料となります
HIVに感染しても特別な自覚症状が出ませんし、初期症状と呼ばれる症状は素人ではわかりません、当然検査を受けない限り感染しているかどうかは分かりません。感染する危険な行為をした場合は、検査を受けることをおすすめします。
保健所では匿名・無料で検査・相談を行っていますので、プライバシーは守られます。名前の代わりに番号のみ使用し、その番号で検査が行われます。従って個人を特定されることなく検査が受けられます。検査結果はその番号が書かれた特定の用紙と引換えに聞くことができます。保健所によっては上記のような一連の流れが異なる場合があります。
保健所・HIV公的検査機関での検査は無料です(特別の理由で診断書が必要な場合は費用がかかる所もありますので、事前に問い合わせる必要があります)。また、医療機関でも検査は受けられますが、初診料等が必要となり5,000〜10,000円程度かかります。
保健所・検査機関によって検査日時が異なります。多くの保健所は1週間に1日、平日の昼間に検査を行っていますが、平日の夜間、土曜、日曜などに検査を行っている保健所もあります。都合の良い日時に検査を受けられる検査機関をインターネットで検索するのもひとつの方法です。また、保健所によっては予約が必要なところもありますので、直接電話をし、予約してから検査を受けに行ってください。
検査は全国のほとんどの保健所でも匿名・無料で受けることができます。自分の居住地以外の保健所でも検査を受けることができます。また医療機関でも検査を受けることができますが有料となります。あなたの行きやすい保健所で検査を受けられるのが一番良いでしょう。
保健所は日常の健康相談・医療相談をはじめ感染症対策、食中毒の調査・検査など、健康に関する様々な仕事をしているところです。医療関係の専門職員も多く働いていますので、何か分からないこと、心配なことなどありましたら気軽に相談してください。
現在、エイズ治療に使われている薬はエイズウイルスを殺すことは出来ません、そのためエイズウイルスをを体内から完全に排除することは出来ません。何種類か薬を組み合わせて使用する『カクテル療法』と呼ばれる方法で、エイズウイルスが体の中で増殖するのを押さえ、エイズの発症を遅らせることができます。専門医による適切な治療を受け、正しく薬を服用し、健康な生活スタイルを維持していけば、長期間にわたり健常人と変わらない日常生活を送ることができます。感染初期から治療を始める場合には、薬剤の間欠投与による比較的短期間の薬剤投与で免疫力を高めてウイルスをコントロールしていく新しい治療法も開発されつつあります。
保健所によっては、エイズ抗体検査と一緒に無料で他のSTD(梅毒、淋菌、クラミジア等)検査を行っている所もありますので、事前に電話で問い合わせて下さい。また医療機関では、いつでも他のSTD検査を受けることができますが有料となります。
保健所は結果が分かるまでに1週間程度かかりますが、スクリーニング検査で陽性の場合には確認検査を実施し、本当に陽性かを調べて結果を返すためにもう少し日にちがかかります。医療機関や保健所でも即日30分検査をおこなっている所もあります。ただしこの場合はスクリーニング検査のみの判定となりますので、もし陽性だった場合には再度確認検査を受ける必要があります。
この検査法はイムノクロマト法と呼ばれる簡易検査です。 この検査は、通常「迅速抗体検査」、「即日抗体検査」とも呼ばれます。 迅速抗体検査法は通常の抗体スクリーニング検査法と比べますと若干感度が悪いですが、検査を受けるタイミング(不安な行為から12週以降)を間違えなければ検査法として特に問題はありません。陽性の場合は必ず確認検査で本当の陽性か偽陽性かを調べるのはスクリーニング検査と同様です。
エイズウイルスに感染すると、体内ではまず進入したエイズウイルスが増え、その後エイズウイルスに対する感染抗体が作られます。通常のエイズ抗体検査では血液の中にこのエイズ抗体があるかどうかを調べます。ただし、エイズウイルスに感染すると、普通は3〜4週間後から抗体が検出されるようになります。従って、感染した日からおよそ2ヶ月以内に抗体検査を受けた場合には、エイズウイルスに感染しているのにも関わらず、検査で検出出来る量のエイズ抗体が出来ていないことから結果が「陰性」となることがあります。 抗体検査で見つかるエイズ抗体の出来る時期は人によって異なりますので、全ての人が検査で見つかる時期、即ち12週以降に受けることにより、信頼できる検査結果が得られます。
NAT(Nucleic acid Amplification Test)とは、血液中に存在するウイルスを構成する核酸の一部を、試験管内で人工的に多量に増幅(ウイルスの一部を多量にコピーして増やすこと)して、そのウイルスを直接検出する方法です。 ウイルスが極少量でもあれば、ウイルスの一部を1億倍以上に増やし検出することができるため、ウインドウ・ピリオドをおよそ半分以下に短縮することができます。
1999年(平成11年)10月10日より、全献血血液に対するHBV、HCV、HIVの3種のウイルスに対してNATを実施しており、血液製剤の安全性の向上に努めています。
本来NAT検査とは、HIV、HBV、HCVを同時に検査する検査法で、血液センター専用の検査です。 病院ではNAT検査を実施しておらず、そのかわりにエイズPCR検査を実施しています。 従って病院で受ける場合は、「エイズPCR検査」が本当の呼び方ですが、NAT検査が有名になりすぎて、「エイズPCR検査」を総称して、NAT検査と呼んでいます。 検査原理としてはこの2つの検査はほとんど同じです。
エイズウイルスに感染しますと、一般的に感染の数週後に血中にウイルスが検出されます。抗体が検出されるのはウイルスの検出のおよそ2週間後(人によって異なります)になります。 このように感染してから検査で感染が分るようになるまでの期間を【ウインドウ期】と呼びます。NAT検査では抗体検査より2週間ほど【ウインドウ期】が短縮されることから、感染初期の疑いのある場合はNAT検査が有効となります。ただ、感染後2〜3ヶ月後にはほとんどの場合抗体が検出されますので、感染の心配があってから2〜3ヶ月以上経過している場合は、通常の抗体検査で大丈夫です。検査を受ける期間が2〜3ヶ月とあいまいな表現になっているのは、現在使用しているエイズ抗体検査の検出感度が良くなり、現在では2ヶ月で検査が可能と言われていますが、抗体が出来るまでの期間は個人によって差がありますので、血液の鉄人は安全を考えて12週経ってからの検査を推奨しています。
エイズウイルス感染した初期には、血液検査で感染の分からない期間があります。これを【ウインドウ期(ウインドウピリオド・空白期間)】と呼んでいます、エイズ抗体検査では感染した日からおよそ2ヶ月あります。また、【ウインドウ期】の中でも血中にウイルスが存在し、輸血により感染が起きる危険のある期間を特に「感染性ウインドウ期」と呼んでいます。エイズウイルスの「感染性ウインドウ期」は抗体検査で22日、さらに感度の良いNAT検査(ウイルス核酸増幅検査)でも11日あります。この期間にNAT検査を受けても検出することは出来ません。
通常は、エイズウイルスに感染してから3〜4週間後に抗体が検出されます。従って、感染の機会から2ヶ月以上過ぎている場合は感染していないと考えて良いでしょう。もし、感染の機会から2ヶ月以内の場合は、12週過ぎてからもう一度エイズ抗体検査を受けて、感染していないことを確認することをお勧めします。
通常は、エイズウイルスに感染してから3〜4週間後に抗体が検出されます。従って、感染の機会から2ヶ月以上過ぎている場合は感染していないと考えて良いでしょう。もし、感染の機会から2ヶ月以内の場合は、2ヶ月以上過ぎてからもう一度エイズ抗体検査を受けて、感染していないことを確認することをお勧めします。
今回、性行為感染症に感染してしまったのですが、HIVに感染していると考えたほうがいいのでしょうか?必ずしもHIVに感染しているとは限りませんが、感染している可能性は高くなります。性行為感染症に感染するとHIVに感染しやすくなる理由は以下の通りです。
2001年にCDCが発表した、『HIV予防戦略文書(HIV Prevention Strategic Plan Through 2005)』によりますと、性行為感染症に感染していると、感染していない場合に比べて、梅毒や性器ヘルペスなど粘膜に潰瘍の出来る性行為感染症に感染している男性では10〜50倍、同じく粘膜に潰瘍の出来る性行為感染症に感染している女性では50〜300倍、HIVに感染しやすくなり、クラミジアなどの粘膜に潰瘍の出来ない性行為感染症に感染している場合でも男女共に2〜5倍、HIVに感染しやすくなると報告されています。だからといって、1回のコンドーム無しの性行為で必ずしも感染するという訳ではありませんが、HIVに感染しやすくなることは紛れもない事実です。
今回、性行為感染症に感染してしまったということですが、HIVに限らず、性行為感染症に感染するということは、コンドームなしの予防しない性行為があったことを意味しますので、今回感染した性行為感染症以外にも、HIVを含め、感染している可能性はあります。ただし、必ずしも感染しているいるということではなく、感染のリスクが高いとご理解下さい。もし、他の性行為感染症も心配なら、病院で医師と相談のうえ、HIVも含め、他の性行為感染症の検査を受けられるべきです。医療機関での検査は有料ですので、料金が気になる場合は事前に病院に問い合わせるか、あらかじめ主治医に確認してみてください。また、HIVについては全国の保健所や保健福祉センター、保健センターなどで、無料・匿名で検査が受けられますので、それを利用するのもひとつの方法です。自治体によっては、他のいくつかの性行為感染症(クラミジア、梅毒、淋病など)の検査も、そこで同時に受けられる場合がありますが、性行為感染症の検査は無料の場合と有料の場合がありますので、ご自身が行きやすい保健所へ問い合わせてみてください。
早めに受診して、検査を受けることが大切で、今回、性行為感染症に感染した、または感染したのではないかと思いながらも、医療機関の受診を迷うより、できるだけ速やかに受診されることをお勧めします。なぜなら、大抵の性行為感染症は薬などで治療可能だからです。しかも早めに治療すればするほど、それだけ軽く済むことが多いですし、早く治りやすいです。治療せずに放置しておくと、重症になったり、結果として後々不妊症を引き起こしたりすることがあります。また、性行為感染症の種類によっては感染していても何の症状も出ないことも多いので、症状がないからといって安心はできません。特に女性は、男性よりも症状が出ないことが多いので、気づくのが遅れがちです。さらに、治療すれば、パートナーにも感染させずに済みます。そのためにも、早期に受診し、検査を受けて適切な治療を受けられることをお勧めします。治療には健康保険が使えますし、プライバシーは守られますので心配はいりません。
エイズ以外で主に性行為で感染する代表的な病気を表に示しました。これらの病気は一般に性行為感染症(STD)と呼ばれます。この中には症状が出にくいものもあり、感染に気づかず、正しく治療をしていないことが、次々と感染者を増やす原因になっていますので注意が必要です。
【主なSTD】 | ||||
病名 | 潜伏期間 | 主な症状 | 検査方法 | 治療法 |
性器クラミジア | 1〜3週間 | 男性:尿道のかゆみ。排尿時の軽い痛み。尿道口から分泌液が出る。 女性:無症状(おりものに色や匂いが出ることもある)。 |
尿・分泌液・おりものを顕微鏡での検査。尿道や子宮頸管の擦過物からクラミジア・トラコマティス抗原を検査。 尿、尿道や子宮頸管の擦過物からクラミジア・トラコマティス−DNA検査。血液中のクラミジア・トラコマティス抗体−IgA及びIgG検査 |
抗生物質の内服。 |
性器ヘルペス | 2〜12日 | 性器やその周辺がかゆくなり、数日すると水ぶくれができて痛む。 | 患部の分泌物で単純ヘルペスウイルス特異抗原検査を行う。 | 抗ウイルス薬の内服や軟膏の塗布 |
尖形コンジローム | 1か月 〜数年 |
性器・肛門周辺にカリフラワー状のイボがたくさんでき、かゆみを伴うこともあるが、自覚症状がない場合もある。 | イボで診断。イボ がない場合は患部の分泌物やぬぐい液でヒトパピローマウイルスDNAを検査。 | レーザーメスや電気メス、冷凍療法でイボを取り除く。軟膏の塗布。 |
梅毒 | 約3週間 | 感染からの時期によって症状が変化する。 第1期(感染後3週間〜3か月):菌が入った部分にしこりができるが、痛みはない。 第2期(3か月〜3年):皮膚に発疹ができたり、発熱や全身不快、倦怠感など風邪のような症状が出 たりする。 第3、4期(3年〜十数年)以降:心臓、血管、脳、脊髄が侵され、身体各部に機能不全や痛みが起こり、死に至る。 |
血液や患部からのうみからトレポネーマを調べて診断、血液による梅毒血清反応検査を実施。 | 抗生物質の内服。 |
淋 病(淋菌感染症) | 2〜9日 | 男性:尿道から黄色いうみが出て、排尿痛がある。全体が腫れ上がることもある。 女性:緑黄色の濃いおりものが出る。尿道からうみが出る。男性に比べて症状が軽く、無自覚な場合も多い。 |
ペニスや子宮頸部、喉頭、肛門など感染した部分からの分泌物から淋菌を調べて診断。ペニスや子宮頸部の分泌液や尿で淋菌DNAを調べる | 抗生物質の内服。 |
A型肝炎 | 2〜6週間 | 高熱、食欲不振や下痢、嘔吐などの消化器症状や全身倦怠感といった風邪に似た症状が続いた後、黄疸が出る。 | 血液でHA抗体検査を行う。 | 安静にする。 |
B型肝炎 | 急性肝炎の場合は1〜6か月 | 自覚症状がない不顕性肝炎が70〜80%。急性肝炎になると、発熱、黄疸などの症状が出ることがある。 | 血液でHBs抗原・HBc抗体検査やHBV DNA検査を行う。 | 急性肝炎は安静にする。慢性肝炎には抗ウイルス薬や肝庇護剤を投与する。 |
C型肝炎 | 2〜16 週間 |
自覚症状がない場合が多い。急性肝炎の場合でも症状が見られるのは2〜3割で、全身倦怠感や食欲不振、悪心、嘔吐などの消化器症状や黄疸などの症状が出ることがある。 | 血液でHCV抗体・HCV抗原・HCV RNA検査を行う。 | 急性肝炎は安静にする。慢性肝炎には抗ウイルス薬や肝庇護剤を投与する。 |
トリコモナス症 | 4〜20日 | 男性:症状がほとんどない場合が多い。 女性:黄色の泡状をした悪臭を放つおりものが出る。かゆみがある。 |
分泌物を顕微鏡で検査して診断。 | 抗トリコモナス剤の内服や膣錠を用いる。膣の洗浄。 |
軟性下疳 | 3〜5日 | 外陰部や膣に小さな赤い発疹ができ、潰瘍になる。痛みを伴う場合がある。 | 細菌を培養して診断。 |
抗生物質の内服。 |
鼠径リンパ肉芽腫症 | 3〜30日 | 外陰部に小さな水泡ができる。太ももの付け根のリンパ腺が腫れ、大きくなってうみが出る。 | うみを採取して顕微鏡で細菌を確認。 |
抗生物質の内服。 |
毛じらみ症 | 1〜2か月 | 外陰部のかゆみ。 | 毛根の毛ジラミ(寄生虫)や卵を確認。 | 卵が生みつけられた性毛を剃る。軟膏の塗布。 |
疥癬 | 約1か月 | 皮膚の激しいかゆみ。 | 疥癬の通った跡などから寄生虫を検査して確認。 | 服薬と軟膏の塗布。 |
Q&A│新 医学と切手の極意