カメルーンで今回発見された新種HIVについて解説します。
その前に、今までに見つかっているHIVについて再度確認しておきます。
HIVは、ウイルスの分類上は、エンベロープを持つプラス鎖の一本鎖RNAウイルスであるレトロウイルス科レンチウイルス属に属します。
そして、HIV-1(Human Immunodeficiency Virus type1)とHIV-2(Human Immunodeficiency Virus type2)に分類されています。
HIV-1は、霊長類を自然の宿主(しゅくしゅ)とするサル免疫不全ウィルス(Simian Immuno-deficiency Virus, SIV)が、突然変異によってヒトへの感染性を獲得したと考えられています。
HIVの塩基配列を比較すると、HIV-1はチンパンジーから分離されたSIVcpzに近く、HIV-2はマカクやマンガベーなどのサルから分離されたウイルスSIVmacやSIVsmmに近い事が明らかにされています。
この様な事から、SIVに感染したサルからヒトへと感染し、HIVに進化したと考えられています。
HIV-1とHIV-2の基本的な遺伝子の構造はほぼ同じですが、塩基配列の相同性は低く60%程度です。
最も大きな遺伝子の相違は、HIV-1にはvpu、HIV-2にはvpxがそれぞれに存在する事です。
またこの相違はSIVcpzとSIVsmmの間にも見られる事から、HIV-1とHIV-2はそれぞれ独立した祖先から、人間に感染する能力を持ったウイルスに進化したものと現在では考えられています。
HIV-1は塩基配列により3群に分類されます。
グループM(Major)、グループO(Outlier)、グループN(non-M/non-O)に分類され、世界的に流行しているHIVの多くがグループMに属しています。
グループMはさらにA、B、C、D、E(後に組換え体であるCRF01_AEである事が判明。純粋なEは未発見)、F、G、H、J、Kの10のサブタイプに分類されています。
更にこのサブタイプ間での組換え体が存在し、CRF(circulating recombinant form)が、現在までに15種類が確認されています。
日本の感染者の主なサブタイプは、BとCRF01_AEで、サブタイプBがおよそ75%、CRF01_AEが20%、残りがそのほかのサブタイプです。
それでは、2009年にカメルーンで女性から発見された新型のHIVとはどのようなウイルスなのでしょか?
ネイチャーの電子版から読み取れることは、
この亜型HIVは、西アフリカのカメルーン出身の女性から発見され、HIV感染の大半を占めるHIV-1の一種とされています。
これまで、HIV-1はすべて、チンパンジーとの関連性が指摘されて今したが、新たに発見された亜型HIVは、ゴリラ由来のHIV-1に属し、最も感染例が多いグループM、症例がほとんどないグループOとグループNという3つのHIV-1亜型に加えて、グループPと命名されました。
従いまして、今回発見された新型HIVは、HIV-1の亜型に属するグループPに分類されることになり、HIV-3ではありません。
今まで発見されていたHIV-1とHIV-2のグループ全ては、現在のHIV検査で検出可能ですが、今回発見されたこの新種HIV-のグループPは現在の全てのHIV検査では検出できないはずです。
今回発見された新種HIVのついては、新しく情報が入り次第逐次お知らせ致します。
written by 血液の鉄人知識の窓│新 医学と切手の極意