HTLV-1について
Q1 HTLV-1とは?
- HTLV-1(Human T-lymphotropic Virus-T:ヒトTリンパ球向性ウイルス1型)とは,ヒトに感染するウイルスの一種で,ATL(adult T-cell leukemia:成人T細胞白血病)やHAM(HTLV-1-associated myelopathy:HTLV-1関連脊髄症)等を引き起こすウイルスです。
Q2 キャリアとは?
- HTLV-1が体の中に入っても,発病する人はほんの一部です。
- HTLV-1に感染して、体内にはHTLV-1が存在しますが、発病していない人のことを「キャリア」と呼びます。
- ほとんどのキャリアの人は、感染していない人と同じに天寿を全うすることがで、成人T細胞性白血病を発症する人はほんの少数です
- 母親がキャリアであると,母乳によって赤ちゃんに感染する可能性があります。
- この場合、母乳を−20℃以下に凍結させることによってHTLV-1を死滅させることが出来ますから、一度凍結した母乳を再度温めて授乳することにより感染を防ぐことが出来ます。
Q3 HTLV-1に感染すると必ず成人T細胞白血病になるのか?
- HTLV-1が体の中に入っても,発病する人はほんの一部で、感染からおよそ40年以上(平均55年)を経過したキャリアから年間およそ1000人に1人の割合で発症しているといわれています。
- この病気の特徴は40歳代〜60歳代に多く発病し、白血球の一種のT細胞がガン化し、患者の多くは発病すると急速に悪化し、患者のおよそ50%は半年以内に、残りの殆ども2年以内に死亡します。
- この病気で亡くなった有名人では女優の夏目雅子がそうです。
- HTLV-1に感染した人が全て成人T細胞白血病になるとは限りません。
- 特に成人になってからHTLV-1に感染した人で、成人T細胞白血病を発症した人はいません。
- 逆に子供の時にHTLV-1に感染して、キャリアとなり成人してから成人T細胞白血病を発症する人がほとんどです。
Q4 HTLV-1はどのようにして感染するのか?
- HTLV-1の感染経路は,主にHTLV-1を持った母親から子への母子感染で,この他には輸血による感染,性行為による男性から女性への感染があることが知られています。
- なお,現在は献血時の血液検査にHTLV-1を採用して陽性血液を排除していることから,輸血による感染はありません。
Q5 母親から子への感染はどのようにしておこるのか?
- HTLV-1の母子感染のほとんどが母乳による感染です。この他に,胎児の感染(経胎盤感染),出産時の感染(経産道感染)等が考えられていますが,現在のところはっきりとはわかっていません。
Q6 どうして母乳から感染するのか?
- 母乳中のHTLV-1感染リンパ球が,授乳によって,赤ちゃんの体内に入り感染する(経母乳感染)と考えられています。
Q7 児への感染を防ぐためにはどのようにすればよいのか?
- 経母乳感染を防止するには,人工栄養とする方法と,3ヶ月以内の短期間の授乳とする方法があります。3ヶ月以内なら,お母さんからもらった移行抗体(抵抗力)があり,感染率が低いといわれています。
- あるいは母乳を−20℃以下に凍結させることによってHTLV-1を死滅させることが出来ますから、一度凍結した母乳を再度温めて授乳することにより感染を防ぐことが出来ます。
Q8 性行為による感染とは?
- 性行為による感染は,キャリアの男性の精液を介する感染がほとんどと考えられていますが,HTLV-1の感染力は非常に弱く,反復継続した性行為を行う男女間における男性から女性への感染が主なものです。
- 性行為による感染のほとんどは、男性の精液中のHTLV-1感染リンパ球による女性への感染ですから、コンドームを使用して膣内への射精を防げば、感染は予防できます。
- また、女性の膣分泌液の中には、感染リンパ球がほとんどいないことから、女性から男性に感染することはまずありません。
- 男性から女性へのHTVL-1の感染のメカニズムは、精液中に存在するHTLV-1感染リンパ球により子宮頚管上皮細胞が感染し、それがTリンパ球に感染し、血中で感染リンパ球が増加して感染が成立すると考えられています。
- 一般的にHTLV-1は男性から女性へ感染しますが、ペニスに性行為感染症が有り、ペニス粘膜に潰瘍が存在する場合には、女性から男性への感染が起こることが報告されています。
- 成人になってからHTLV-1に感染しても、成人T細胞白血病を発症を発病する人はいないことから、仮に性行為でHTLV-1に感染しても、成人T細胞白血病を発症することはないと言われています。
Q9 感染しているかはどうすれば解るのか?
- 医療機関の血液検査でHTLV-1に対する抗体の有無を調べれば,わかります。
Q10 日常生活での感染はないのか?
- HTLV-1はリンパ球の中にひそんでおり,その感染力は極めて弱いため,身近にHTLV-1キャリア又はATLの患者さんがいても日常生活の中ではまず感染しません。
Q11 HTLV‐Tの検査法とは?
- HTLV‐Tが感染することによってに身体の中に作られる抗体を検査することでHTLV-1の存在を知ることができます。
- 検査法にはいくつかの種類があり、それぞれの検査法で長所と短所があるため、陽性の判定は2〜3種類の方法を組み合わせて、最終判断を必要があります。
- 血液センターでは献血された血液についてPA法(ゼラチン粒子凝集法)でスクリーニングを行い、陽性になった場合に、検査結果を本人に津位置する必要があることから、EIA法(酵素免疫測定法)とIF法(間接蛍光抗体法)で確認検査を行っています。
- HTLV‐T抗体陽性となった場合は、HTLV‐Tに感染し、ウイルスを保有している可能性があると思われ、そのような人をキャリアといいます。日本ではおよそ120万人の方がウイルスを保有していると推計されています。
Q12 夫婦間感染とは?
- 性行為の場合は、精液中のリンパ球の中のHTLV-1が感染することから、おもに夫から妻に感染します。
- 夫婦間の性交渉での感染は、10年間でHTLV‐T抗体陽性の妻から夫へは、0.4%と極めて稀ですが、逆にHTLV‐T抗体陽性の夫から妻へは60%と高い感染率が報告されています。
- 性交渉によるHTVL-1の感染は、コンドームを使用することで感染防止が可能です。
- しかも、成人してからの感染の場合、ATL発症についての報告はありません。
- いずれにしても、HTLV-1が体内に入ったからといって必ずしも感染することは限りません。