梅毒血清反応には脂質抗原を用いる方法(STS)と、 梅毒病原体(TP)を抗原として用いる方法があります。
それぞれの特徴に応じて、両者を組み合わせて梅毒の検査を行います。
一般的に検査を受ける時期は、不安な行為から1ケ月以降です。
梅毒感染のスクリーニングでは定性検査を行い、治療効果の判定などで抗体価の変動を見たいときに定量検査を実施します。
- ● STS検査 (Serologic Test for Syphilis:脂質抗原検査)
- 梅毒トレポネーマの脂質(カルジオリピン-レシチン)に対する抗体を検出します。
梅毒に感染しますと、病原体が体の組織を破壊しますので、その時に破壊された体の組織から脂質抗体が出てきます、この脂質抗体を見つける検査です。
○ 早期に陽性となるため、早期診断に適しています。
○ 抗体価が臨床経過を反映するので、治療効果の判定にも適しています。
× 病原体とは直接関係ない脂質を抗原としているので、梅毒以外の感染症、膠原病、妊婦、高齢者あるいは健康な人でも、生物学的偽陽性反応 (BFP:Biological False Positive)を呈する事があります。
- ● TP検査 (Treponema pallidum)抗原検査
梅毒病原体(TP)に対する特異抗体を検出します。
○ 梅毒に対する特異性が高いため、確定診断に有用です。
× 感染後、陽性となるまでに時間を要するので、早期診断には適していません。
★感染して一度この検査が陽性になると、幾ら治療してもこの検査は陰性とはなりません。
従いまして、一度陽性となると陽性が持続して梅毒感染の既往歴となり陽性となり続けるため、治療効果の判定には適していません。
梅毒検査結果の解釈
STS検査とTP抗原検査を組み合わせて、梅毒感染の有無を判断します。
STS
検査TP抗原
検査判定 解釈 (-) (-) 梅毒ではない
梅毒感染初期で検査を受ける時期が早すぎる場合もあることから、感染の可能性があるときは日をあけて再度検査をし、陰性であれば感染なしと判断します。(+) (-) 生物学的偽陽性(BFP)
または、梅毒感染初期(再度検査をすることにより陽性となれば梅毒感染と判断します)(+) (+) 梅毒
梅毒治療後の抗体保有者(梅毒に感染している)(-) (+) 梅毒治療後の抗体保有者(治療の必要性はなく、相手に感染させることはありません)または、まれにTP抗原系の偽陽性反応
梅毒の感染力と検査結果
梅毒の感染力は第1期から第2期では強く相手に感染させますが、その後はどんどん感染力は低下していき、 感染後2年を経過しますと感染力はなくなるといわれています。 感染力のある初めの2年を早期梅毒、 それ以降の感染力のなくなる時期を晩期梅毒とよぶこともあります。
しかし、感染力はなくても梅毒の病原体は体の組織や神経細胞を破壊しますので、治療は必要です。
前述の通りTP抗原検査は治癒後も陽性が持続しますが、 そのようなケースは感染力がありません。