血液の凝集と溶血について


抗原抗体反応は、なぜ凝集と溶血という、反対のような現象になるのでしょうか。




凝集反応とは赤血球が格子状に寄り集まることを言います。
A型の人の赤血球にはA抗原があります。
B型の人の血清中には抗A抗体があります。
A型の人にB型の血液を輸血するとB型の人の血清中の抗A抗体がA型の赤血球の表面にあるA抗原と反応して赤血球が寄り集まって凝集を起こします。
A抗原と抗A抗体による抗原抗体反応でこれを凝集反応と呼びます。ですから輸血にはABO式血液型の同じ型を輸血する必要があるわけです。
この凝集反応は赤血球だけではなく、細菌やウイルスでも起こります。

溶血反応とは赤血球の膜が壊れてパンクする状態を呼びます。
溶血する対象が赤血球の時に「溶血反応」と呼びます。
従いまして、細菌が溶ける場合を「溶菌反応」、白血球の場合は「白血球溶解反応」と呼びます。
人の血清中には正常同種溶血素と補体と呼ばれる成分があります。
この二つの成分が抗原抗体反応を起こしたものに反応して赤血球を壊すことを溶血反応と呼びます。
また、人の体の中には異種溶血素も存在し、動物の血液が輸血されると、動物の血液と異種溶血素と補体が反応して溶血反応を起こします。
ですから動物の血液は人には輸血できないわけです。

まとめますと、
A抗原+抗A抗体=凝集反応
凝集反応+正常同種溶血素+補体=溶血反応

となります。

Rh血液型の時は以下のように解釈します。
Rhマイナスの人は最初から抗D抗体を持っていません。
一度Rhプラスの血液の輸血を受けるか、プラスの子供を妊娠することにより抗D抗体を作ります。
そして二度目にRhプラスの輸血を受けたりRh陽性の子供を妊娠すると、体の中に出来た抗D抗体がRhプラスの人の赤血球の表面にあるD抗原と抗原抗体反応を起こし赤血球を凝集させます。
この凝集したものに正常同種溶血素と補体が反応し溶血反応が起きるわけです。

まとめますと、
D抗原+抗D抗体=凝集反応
凝集反応+正常同種溶血素+補体=溶血反応

となります。

ABO式血液型もRh血液型の場合も試験管の中では凝集反応となりますが、生体の中では溶血反応を起こします。
書物にはABO式血液型の発見の際には凝集反応が起こりRh血液型発見の際には溶血反応が起こったと記載されていますが、両者の違いはABO式血液型発見の機会は生体外での検査により凝集反応からの発見。
Rh血液型は輸血による溶血反応が血液型の発見契機になったためにRh血液型は赤血球を溶血させると記載されているわけです。
Rh血液型も検査では凝集反応が起こり、試験管の中では溶血反応となります。

凝集した赤血球は血管を詰まらせたりします。さらに凝集した赤血球は体内で処理されために貧血が起こるなど体に悪影響を与えます。
溶血反応は即時に体に悪影響を与えます。
いずれの場合も最悪の場合は死に至ります。

血液の鉄人

新 医学と切手の極意