医事通信(2010年12月02日号)
平成22年第3四半期の新規HIV感染者AIDS患者の発生状況
- 厚生労働省は2010年11月29日、2010年6月〜9月に報告された新規エイズ患者数が111人だったと発表しました。
- 新規HIV感染者報告数は、257件で、過去9位
- 内訳としては、男性240件、女性17件で、男性は前回(248件)及び前年同時期(234件)より増加し、女性は前回(15件)及び前年同時期(15件)より増加しています。
- 新規AIDS患者報告数は111件(前回報告129件、前年同時期96件)で、過去7位となりました。
- その内訳としては、男性103件、女性8件で、男性は前回(125件)より減少し、前年同期(89件)より増加、女性は前回(4件)及び前年同期(7件)より増加しています。
- HIV感染者とAIDS患者を合わせた新規報告数は368件で過去10位となっています。
1.新規HIV感染者
- 同性間性的接触によるものが180件。
- 異性間性的接触によるものが37件で男性28件、女性9件。
- 母子感染によるものが前回に引き続き1件発生しています。
- 静注薬物による感染者はありませんが、静注薬物と同姓間性的接触とダブル事例が2件存在しています。
- 年齢別では、特に20〜30 代が多い傾向が見られますが、40代、50代以上も多い報告が得られています。
2.新規AIDS患者
- 同性間性的接触によるものが50件。
- 異性間性的接触によるものが29件で、そのうち男性24件、女性5件。
- 静注薬物によるものは発生していません。
- 年齢別では、特に30代以上に多い傾向が見られますが、50代以上での増加も見られます。
HIV感染者、AIDS患者共に前回報告と比較して減少していますが、前年同時期と比較すると増加している傾向にあり、以前増加傾向にあることに変わりありません。
まとめ
1.自治体が実施するHIV抗体検査件数・保健所等における相談件数は、平成20年第4四半期をピークに減少傾向にありましたが、今回第3四半期においては、増加しており、検査を受ける人の減少傾向に一定の歯止めがかかったと考えられています。
この度の検査増加の要因としては、2010年8月にAIDS患者が過去最大となったと報告されたことからと考えられます。
保健所等で検査を受ける人が増加することは、HIV検査を受ける必要性を理解してきていると考えられますが、ここで気を抜くことなく、「感染するような不安な行為をすれば必ずHIV検査を受ける」という啓蒙活動を更に続けていく必要があります。
2.前回に引き続きこの度も母子感染が報告されたことから、母子感染の予防対策を積極的に行う必要があります。
母子感染は早期発見により、適切な感染防御対策を講じることにより、感染率を1%以下に抑えることは可能ですから、妊娠時のHIV検査の必要性を周知徹底させることが今後の課題となります。
3.AIDS患者の発生状況が引き続き高いことから、「早期発見、早期治療」の重要性をもっと周知徹底する必要があります。
4.HIV感染は他人事ではなく、感染する機会は誰にでも平等にあることから、HIV/AIDSに対する正しい知識を積極的に吸収して、正しい予防を行う必要があります。
5.HIVを無毒化する抗HIV薬および感染予防ワクチンが存在しない現在、『感染予防』に心がけることが最大の治療法と、各自が認識して、感染するような不安な行為を慎むことです。
written by 血液の鉄人
医事通信│医事通信 バックナンバー|新 医学と切手の極意