医事通信(2011年09月07日号)
4価ヒトパピローマウイルス様粒子ワクチン承認販売開始
2011年7月1日、4価ヒトパピローマウイルス様粒子ワクチン(商品名ガーダシル水性懸濁筋注、同水性懸濁筋注シリンジ)が製造承認を取得しました。
このワクチンは、ヒトパピローマウイルス(HPV)6型、11型、16型、18型の感染に起因する子宮頸がんや尖圭コンジローマなどを予防するワクチンです。
接種方法としては、9歳以上の女性が適応で、合計3回(2回目は初回接種の2カ月後、3回目は6カ月後)筋肉内注射します。
子宮頸がんは、日本では毎年1万2000人が罹患し、約3500人が死亡しています。
患者は20歳代後半から上昇し始め、30歳代に罹患のピークが認められ、子宮頸癌の罹患率が上昇傾向にあることが、ここ数年、社会問題化しています。
子宮頸がんは、ほぼ100%、HPVの感染が原因であると考えられています。
発がん性のあるHPVには15種類ほどの型が存在し、16型と18型は、子宮頸がんの発症原因の約65%を占めています。
さらに、6型と11型は、尖形コンジローマの発症原因の約90%を占めています。
これら発がん性HPVは、80%の女性が一生の間に一度は感染するありふれたウイルスで、ほとんどの場合は感染しても自然に排除され、HPVに感染しても必ず子宮頸がんになるとは限りません、子宮頸がんになるのは感染した女性の1%未満と考えられています。
この発がん性HPVは、自然感染しても抗体価が十分に上昇せず、同じ型のウイルスに何度も感染します。
このような理由から、発がん性HPVに対する高い抗体価を長期間維持する方法として、ワクチンの開発が切望されていました。
この度承認された『ガーダシル』は、2009年12月に承認された『サーバリックス』に次いでふたつ目のHPVワクチンです。
『サーバリックス』は、HPVの16型と18型による感染を予防するのに対し、『ガーダシル』は6型、11型、16型、18型の4つの型のHPVウイルスに対応する4価のワクチンで、子宮頸がんだけでなく、尖形コンジローマ、外陰上皮内腫瘍、腟上皮内腫瘍にも予防効果を有するのが特徴です。
子宮頚がんは、ワクチン接種と定期的な子宮頸がん検診により、ほぼ100%が予防可能と考えられており、今後、HPVワクチンを接種を希望する女性が増えることが期待されています。
本来の感染源である男性の対応も考える必要があります。
男性にもHPVワクチンを接種すれば感染源が減るので、女性の子宮頸がんも減ると考えられます。
男性でも発症するコンジローマにも対応したガーダシルは、男性に接種する根拠があります。
『ガーダシル』は、男性の尖形コンジローマ感染予防の効果があることからして、諸外国では男性への接種も実施されていますが、日本においては公費による男性への接種は行われないようですが、希望すれば接種は自費で可能です。
written by 血液の鉄人
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