鉄人レター 002号





■□□□□ エイズは正しい知識を身につけることで予防可能な病気です!! □□□□■


■□□□□□□□□□□□  正しい知識を身につけて予防  □□□□□□□□□□□■
                           
                           新・医学と切手の極意
                           
                                  鉄人レター                  

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                                              ◇◇  No.2  ◇◇                
                                              ◇◇  2008年9月22日(月)発行  ◇◇
                                          発行人  血液の鉄人
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      ■■      エイズのリアルタイムPCR検査とNAT検査について      ■■
                     
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      今回は、エイズのリアルタイムPCR検査と
                                  NAT検査について以下に解説します。

□NAT検査(核酸増幅検査)とは

  NAT(Nucleic acid Amplification Test)とは、血液中に存在するウイルスを
構成する核酸の一部を、試験管内で人工的に多量に増幅(ウイルスの一部を多量にコ
ピーして増やすこと)して、そのウイルスを直接検出する方法です。
  ウイルスが極少量でもあれば、ウイルスの一部を1億倍以上に増やし検出すること
ができるため、ウインドウ・ピリオドをおよそ半分以下に短縮することができます。
  1999年(平成11年)10月10日より、全献血血液に対するHBV、HCV、HIVの3種
のウイルスに対してNATを実施しており、血液製剤の安全性の向上に努めています。

□NAT検査とPCR検査の違いは

  本来NAT検査とは、HIV、HBV、HCVを同時に検査する検査法で、血液センター専用の検
査です。
  病院ではNAT検査を実施しておらず、そのかわりにエイズPCR検査を実施しています。
  従って病院で受ける場合は、エイズPCR検査が本当の呼び方ですが、NAT検査が有名
になりすぎて、エイズPCR検査を総称して、NAT検査と呼んでいます。
  検査原理としてはこの2つの検査はほとんど同じです。

□従来のエイズPCR検査とリアルタイムPCR検査の違いは

  従来のエイズPCR検査は、「アンプリコア  高感度法」と「アンプリコア  標準法」の
2つがありましたが、今回この2つの検査を一つにしてリアルタイムPCR検査に統一改良
されました。
  正式名称は、『コバス  taqMan HIV-1「オート」』と呼びます。
  健康保険の名称は『HIV-1核酸増幅定量精密検査』です。
  検出感度に関しては、
  1.高感度法  50×10の五乗コピー/mL
  2.標準法    400×10の五乗コピー/mL
  3.リアルタイム法  40×10の七乗コピー/mL
  で従来の検査方法より非常に検出感度が良くなっています。

□リアルタイムPCR検査はいつから行われているの

  2007年11月26日に発売されて、2008年4月1日から採用されています。
  従来の検査試薬が無くなり次第全てリアルタイム法に統一変更されます。
  既に大手の検査専門の会社ではリアルタイム法に変更済みです。

□検査原理は

  特殊な薬品を使用してエイズウイルスの核酸の一部を化学的に増幅させて、血液の中に
エイズウイルスが存在するかを機械的に検査します。

□どのように検査するの

  検査キット附属の定量標準HIV RNAを含む「カオトロピックイオン溶液」で、エイズウイ
ルスを溶解して、シリカ粒子であるTaqMan磁性粒子懸濁液を使用して、HIV-1 RNA及びHIV-1
 RNAを精製する。
  試料より抽出されたHIV-1 RNA及びHIV-1 QS RNAに自動調製された増幅試薬を加える。
  核酸抽出から増幅試薬の添加までの工程は、専用機器コバスAmpliPrepを、RNAの増幅及び
定量は専用機器コバスTaqManを使用して行われる。
  定量原理は、TaqManプローブを用いたリアルタイムPCRです。
  各サイクルの「Z05 DNAポリメラーゼによる相補鎖の伸長」と「DNAプローブの切断・遊離に
よる蛍光発光」の各ステップで測定された蛍光強度がリアルタイムにモニターされ、反応液中
のHIV-1 RNA及びHIV-1 QS RNAの増幅曲線が得られます。
  この際、HIV-1 RNA用のTaqManプローブとHIV-1 QS RNA用のTaqManプローブでは波長の異なる
蛍光色素を使用していることから、それぞれの識別は可能となります。
  得られた増幅曲線から蛍光強度が一定以上となるサイクル数を求めて、カットオフ値(Ct値:
Critical threshold value)とします。
  HIV-1 Qs RNAのCt値と反応液中HIV-1 RNAのCt値を用いて、キット固有の内部検量線より、血
液中のHIV-1 RNA濃度を計算すます。
  発光強度が一定以上に達しないときは、HIV-1 RNAのCt値として計算されないために、HIV-1 
RNAは算出されません。
  ★非常に専門的な説明となりましたが、要約しますと、【血液中のエイズウイルスを特殊な
薬品で、1億倍に増殖させて、エイズウイルスの遺伝子の一部の核酸を機械的に調べる】検査です。

□検査メーカは何社あるの

  この検査は、世界中で米国のロッシュ社1社からしか発売はされていません。

□どのくらいの時間で結果は分かるの
  検査専門の会社に検査を依頼しますから6〜14日前後かかります。

□検査はプール法か個別法か

  血液センターでのNAT検査は20人の血液をプールして検査するプール法ですが、
病院のリアルタイムPCR検査は一人づつ検査する個別法です。

□検査成績の記載は

  検出範囲は、40〜1.0×10の七乗コピー/mLです。
  以下の三種類に分けて記載されます。
  1.測定上限を超えた場合  検査結果は【>1.0×1.0×10の七乗コピー/mL  検出  陽性】
  2.測定範囲内            検査結果は【○○×1.0×10の○乗コピー/mL  検出  陽性】
  3.測定限界未満でウイルスが存在する時    検査結果は【<○○×1.0×10の○乗コピー/mL  検出 陽性】
  4.測定限界未満でウイルスが存在しない時  検査結果は【<○○×1.0×10の○乗コピー/mL  検出せず  陰性】

□この検査の信頼性は

  非常に優れた検査ですから、不安な行為から11日以降に受ければほぼ100%信頼できる結果
が得られます。
                          ★★【参考資料】★★
                                    ↓
★厚生労働省医薬食品局血液対策課:血液製剤等に係る遡及調査ガイドライン,p26,2005.★

★Schreiber GB et al.The risk of transfusion-transmitted viral infection.N Engl J Med.1996;334:1685-90.★

□検査を受ける時期は

  偽陰性反応を防ぐ意味から不安な行為から11日以降に受ける必要があります。

□ニセの陽性反応は

  製造メーカの調べではゼロと報告されていますが、実際は0.01%以下と考えられています。
  他のウイルスや細菌のよる交差反応(偽陽性反応)は現時点では認められていません。

□ニセの陰性反応は

  不安な行為から11日以降に検査を受ければ起こることはありません。  

□この検査で陽性であればHIV-1またはHIV-2のどちらに感染しているか分かるの

  現時点ではHIV-1の感染しか分かりません。
  ★2008年9月1日から、血液センターで採用された新しいNAT検査は、HIV-1とHIV-2の感染を
同時に検出できるようになりました★

□この検査で見逃すエイズウイルスのサブタイブはないの

  現在世界中で見つかっているエイズウイルス1型のサブタイプ(グループM、サブタイブA〜H
及び0)は全て見つけることが出来ます。

□この検査で陽性になったらどうするの

  日日を開けて再度血液を採血して同じ検査を実施して、陽性であればエイズウイルスの1型に
感染していると判断します。

□抗生物質などの薬剤の影響は

  どのような抗生物質を服用しても、エイズウイルスに効果はありませんので、検査に影響を与
えることはありません。

□ステロイド剤の使用の影響は

  塗り薬や喘息の薬など少量のステロイド剤が含まれる薬剤が影響を与える事はありません。
  入院してステロイド剤や免疫抑制剤を多量に使用していれば、エイズ抗体が出来るのを押さえ
ることがありますが、ステロイド剤はエイズウイルスの増殖を助けるために、この検査に影響を
与えることはありません。

□健康食品・ビタミンなどのサプリメントの影響は

  検査に全く影響を与えることはありません。

□風邪薬・胃薬・頭痛薬などの薬の影響は

  検査に全く影響を与えることはありません。

□検査費用は

  保険点数で510点(5100円)ですから、保険診療であれば、1530円となりますが、
そのほかに初診料などが加算されます。
  自費の場合は、3〜5万円前後かかることがありますので、検査を受ける前に病院に問い合わせて下さい。

□どこで受けられるの

  リアルタイムPCR検査はほとんどの医療機関は、検査専門の会社に検査を依頼しますので、全国
どこの病院・医院でも受けることは可能です。
  ただし保健所では実施しているところは少ないです。

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◆編集後記◆
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最後までお読み頂き、ありがとうございました。
ご理解いだけましたでしょうか。

次回もお読み頂ければ幸いです。

次回発行は10月上旬を予定しておりますのでご期待下さい。

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