24.偽陽性反応・偽陰性反応・判定保留とは−1.偽陽性反応−
偽陽性反応・偽陰性反応・判定保留とは
偽陽性反応・偽陰性反応・判定保留とはどの様な場合を言うのかを、HIV検査と梅毒検査を例にして順次解説していきます。
初回は偽陽性反応についてです。
偽陽性反応の定義
HIV検査や梅毒検査でHIVや梅毒トレポネーマに感染していれば、その検査は陽性反応を呈しますが、HIVや梅毒トレポネーマに 感染に感染していない人でも陽性を示すことを、偽陽性反応といいます。
端的に言いますと感染症を引き起こす細菌やウイルスに感染していないのに、陽性反応を呈することを言います。
偽陽性反応の起きる原因
ある種の疾患に感染していると起こることもありますが、殆どは起きた原因を特定することは出来ません。
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HIV検査による偽陽性反応
スクリーニング検査に用いられるHIV抗体検査は、真のHIV陽性の見落しをなくすために検出感度を極めて高くしていることから、 本来HIVには感染しておらず本当は陰性であるにもかかわらず検査が陽性となる場合があります。
偽陽性反応か、真の陽性反応かは確認検査によって最終判定を行います。
スクリーニング検査陽性で確認検査が陰性の場合は、偽陽性反応と判断します。
当然真の陽性の場合は、確認検査も陽性となります。
HIV抗体検査に偽陽性があることを知らないため、確認検査を実施しないでスクリーニング検査のみ陽性で 「貴方はHIVに感染しています」と伝えて被検者をパニック状態に陥れる医師がいることも事実です。
※HIV検査に疎い医師がこの様な事態を引き起こし、混乱させていることも事実です※
HIV検査の偽陽性反応の出現率は、使用する検査キットの特性によって異なります。
梅毒血液検査による偽陽性反応
梅毒血清学検査のSTS検査(Serologic Test for Syphilis)は、抗カルジオリピン抗体を抗原として検査をすることから、 梅毒トレポネーマに感染していなくても陽性反応が起こることがあります、 このような現象を生物学的偽陽性反応(BFP:Biological False Positive)と呼びます。
STS検査で偽陽性反応が起きる原因としては、STS検査はカルジオリピンと言うリン脂質に対する抗体を検出する為に、 リン脂質は細胞質などの成分として生物界に広く分布していることから、梅毒以外の疾患でもリン脂質に対する抗体が 産生され、反応が陽性となることがあります。
生物学的偽陽性反応を呈する代表的な疾患としては、膠原病、慢性肝疾患、結核やHIV感染症などがありますが、 妊婦や高齢者などでも偽陽性となることがあります。
また健康人でも常にSTS検査が偽陽性反応を引き起こす人がいますが、この場合特に何が生物学的偽陽性反応を引き起こすか ははっきりわかっていません。
したがって生物学的偽陽性反応を未然に防ぐには、梅毒の確定診断にはTP(Treponema pallidum)を抗原としたTPHA法( 梅毒血球凝集反応)とFTA-ABS法(梅毒蛍光抗体吸収法)を用います。
STS検査が陽性となっても、生物学的偽陽性反応を否定しない限り直ぐには梅毒トレポネーマに感染しているとは言えません。
TP検査を実施して陽性となって初めて生物学的偽陽性反応を否定でき、梅毒トレポネーマに感染していると判断できる訳です。
要するにSTS検査が陽性となり、TP検査であるTPHAやFTA-absを実して、TP検査が陰性となる場合は生物学的偽陽性反応 ということになります。
※TP検査でも偽陽性反応はありますが、その出現頻度は非常に低いです※
生物学的偽陽性の発生頻度ははっきりと分かっていません。
3年間に人間ドックで受診した14,337名中26名(0.18%)にBFPが認められたという研究報告が1993年に発表されていますが、 この数値も参考値と受け止めるべきでしょう。
血液の鉄人も性経験もなく先天性梅毒でもないにもかかわらず、STS検査が絶えず陽性となる18歳の女性を経験しています。
この女性を5年間追跡調査しましたが、BFPの起こる原因はわかりませんでした。
梅毒STS検査は、いつ何時生物学的偽陽性反応が起きても不思議はないということです。
24.偽陽性反応・偽陰性反応・判定保留とは−1.偽陽性反応−
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