梅毒について
梅毒とは何ですか?
- スピロヘータの一種である梅毒トレポネーマが、コンドーム無しの性行為により感染する性行為感染症のひとつです。
又、オーラルセックスなどで皮膚や粘膜の傷に接触することで感染する可能性もあります。
- 感染後、治療を行わなければ症状が長期(10年〜25年)の経過をたどりながら、脳神経を侵され廃人となってゆく恐ろしい病気です。
- 抗生物質の登場で患者数は激減しましたが、潜在的な患者は増えているといわれています。
梅毒スピロヘータとはどのようなものですか?
- トリポネーマ・パリーズム(旧学名スピロヘーター・バリダ)とは、らせん状の形態をしたグラム陰性の真正細菌のひとのグループに属します。
- 梅毒スピロヘータは、高温、低温、乾燥にも弱く簡単に死滅し、石鹸水などでも簡単に死滅することが知られています。
梅毒スピロヘータの感染する場所はどこですか?
- 主に性行為・オーラルセックスにより感染、皮膚や粘膜の微細な傷口から侵入し、進行によって血液内に潜みます。
梅毒スピロヘータの感染経路はどのようなものがあるのですか?
- 性行為やオーラルセックスで感染します。
- 口の中に梅毒感染があればキスでも感染します。
- 極めてまれには、傷のある手指が多量の排出菌に汚染された物品に接触して伝播されたとする報告もあります。
梅毒感染者の現状はどうなのですか?
- 梅毒患者数は抗生物質など薬剤開発により戦後減少傾向でしたが、2003年以降、再び増え始め、03年に509例だった報告数は06年に600例を超え、07年737例、08年は823例と毎年100例近く増え続けています。
- 男性では35〜39歳、女性では20〜24歳の割合が高く、20〜24歳の女性は03年15例だったのが、07年には49例と3倍以上に増加しています。
- 1999年以降感染症法に基づく調査が始まって以来最高の患者数となっています。
- 男性間の性行為による感染に加え、男女の異性間でも感染が広がりつつあります。
- 2016年8月現在、患者数は2674人となり、2015年の2660人を上回り、一向に増加傾向が衰えません。
先天性梅毒とはどのような病気でなのですか?
- 妊婦が梅毒になり、治療しないで放置すれば、感染した妊婦の胎盤を通じて胎児に感染する経路があり、先天梅毒の原因となったり死産、早産を起こしたりなど何らかの異常をともないます。
- 現在では、妊娠初期に梅毒検査を行い感染があれば、適切な治療をすることから先天性梅毒は少なくなっていますが、最近では、感染を知らず出産し、子どもが先天梅毒になるケースも報告されています。
- 母子感染による先天梅毒は2006年に10例、08年は7月末現在で7例報告されています。
- 妊娠中に夫から感染したとみられる症例もあります。
- 先天梅毒の子どもの4割は妊娠中か生後1週間までに死亡すると言われていることから、「妊婦健診を必ず受け、感染が判明したらきちんと治すことが大事で、妊娠後期もに2回目の検査を受ける必要があります」。
感染するとどのような症状が出るのですか?
- 潜伏期間は、一般的に3週間前後です。
- 症状としては、以下のように分類されます。
- 1.第1期
感染後3週間して、性器、肛門、口など感染した部分に、小豆大〜エンドウ豆大の痛みの無い赤いシコリが出来ますが、これは潜在化するが4〜6週間で自然に軽快します。女性では気付かない場合がほとんどです。
- 2.第2期
第1期が終了する頃から全身の皮膚に赤い斑点がまばらに現れ、丘疹(皮膚から盛り上がったぶつぶつ)や後頭部に脱毛がみられるようになります。
かゆみや痛みがなく、放っておくと症状は自然に2〜6週間で消えてしまいます。
- 3.潜伏期
第2期の終わる頃より数週間から数年間にわたる無症状の潜伏期に入り、この時期は血液検査でのみでしか梅毒感染の判断は出来ません。
この中の数10%が晩期へと進ます。
- 4.晩期
感染3年後くらいから 皮膚や内臓にゴム腫(固いしこりやこぶができ、周辺の組織を破壊し、治るとあとが残る)と呼ばれる病変が起こります。
その後、関節炎や手足の感覚の喪失し、心臓、血管、脳などに障害が出て、日常生活が営めなくなります。
梅毒を治療しないとどうなるのですか?
- 感染後3〜10年経過するとゴムのような腫瘍(ゴム腫)が出来るようになります。
この状態になってしまうと治癒は不可能となりますが、現在はこのような状態なる人をみることは稀です。
- 感染後10年以降になると多くの臓器に腫瘍が発生したり、脳、脊髄、神経を侵され麻痺性痴呆、脊髄瘻を起こし(脳梅)、死亡しますが、現在では非常に稀となってきています。
梅毒の検査はどのような検査があるのですか?
- 梅毒の検査は、STS(Serologic test for syphilis)(ウシ脂質抗原を使う、ガラス板法、RPR法、迅速検査法)と梅毒トレポネーマ抗原を使うもの(TPHA法、FTA-ABS法)の二つの方法があります。
- 1.カルジオリピンというウシリン脂質を抗原とした方法で、STSと呼びます。
この検査手の中には、RPR法や迅速検査があります。
カルジオリピンは梅毒に感染すると組織から出てくるものです。
- 2.梅毒トレポネーマの菌体成分を抗原とした方法で、TPHAがその代表です。
STSでは感染後早期(2〜3週間)で陽性になるのに対して、TPHAではそれより遅れて4〜5週間で陽性になります。
感染直後はIgMを使うFTA-ABSが陽性になりることから、初期の感染が疑われる場合はこの検査が使用されます。
梅毒の検査はいつ受けたらいいのですか?
- 潜伏期間は3週間前後ですから、4週でSTS検査を受ければ信頼できる結果が得られます。
- 梅毒検査は最初にSTS検査を受けて、これが陽性の場合、TPHA検査を受けて陽性を確認します。
- 注意すべきことは、STSは治療後陰性化しますが、TPHAは陰性化せずに、一生陽性のままとなります。
梅毒の検査の判定はどのようにするのですか?
- STSは、感染早期に陽性化する利点ばかりでなく、治療により治癒すると陰性化する利点があります。このため、梅毒の治療効果はSTSで行います。
- なお、TPHAは一度陽性となると治療により治癒しても陰性化しませんので、治療の判定効果を見るためには使用できません。
梅毒の検査にはニセの陽性反応が出やすいと聞いたのですか?
- 検査の結果、陽性と出たら、梅毒の感染者と判定されますが、STS検査法では膠原病(全身性エリテマドーデス)や肝臓病にかかったときや、妊娠したときなど梅毒に感染していないのに陽性(偽陽性)と出る場合があります。
そのときは、FTA-abs検査やTPHA検査も併用し、それでも陰性なら、梅毒の感染はないと判断されます。
梅毒の治療法はどのようにするのですか?
- 基本的にはペニシリンGの大量投与で、日本では、ベンジルペニシリンベンザチンの120 万単位を2 〜4 週間にわたり内服する方法がよく行われます。
- また、アンピシリンが使われることもあります。
- ペニシリンアレルギーがある場合にはテトラサイクリン、エリスロマイシンを使用しますが、これらの薬剤は髄液への移行が悪い為に、神経梅毒の場合、ペニシリン脱感作を行ってペニシリンを投与するのが勧められています。
- 現在ではペニシリンなどの抗生物質の症によって、早期に治療すればほぼ2〜8週間で治癒します。
- ペニシリンなどの抗生物質の投与で治療しますが、症状が治まっても梅毒トレポネーマが体の中に潜んでいることもあるので、医師が治療の必要がないと判断するまで根気よく治療する必要があります。
梅毒の感染予防はどうすればよいのですか?
- 予防としては、感染者、特に感染力の強い第1 期及び第2 期の感染者との性行為、オーラルセックスを避けることが基本となります。
- コンドーム無しのセックスやオーラルセックスで感染するため、予防にはコンドームの使用が大切ですが、梅毒はコンドーム
では完全に予防できません、初期硬結のある性器と性器粘膜やその他の粘膜が触れ合うことから簡単に感染してしまいます。
- また、コンドームに覆われていない箇所に傷やタダレがあればそこから簡単に感染してしまいます。
梅毒の治療中のセックスはどうすればよいのですか?
- 完全に治癒したと医師に判定されるまで、セックスやオーラルセックスは厳禁です。
梅毒に感染しているとHIVに何故感染しやすいのですか?
- 通常の性行為ではHIVの感染率は平均2%前後と言われていますが、梅毒に感染するとHIVに感染するリスが数倍〜百倍高まると言われています。
その理由は、梅毒スピロヘータの感染により性器粘膜がタダレ、感染防御バリアが破壊されるために、そのタダレた場所から感染するためです。
- 最近では梅毒患者を診たらHIV感染の合併を疑えと言われているように両者の合併例が増えています。
何科を受診すればよいのですか?
- 男性の場合は皮膚科、泌尿器科・性病科、、女性の場合は産婦人科、皮膚科、性病科を受診。
- 特に体に発疹がある場合は、男女ともに皮膚科を受診。
written by 血液の鉄人