トリコモナス症について
トリコモナスとは何ですか?
- トリコモナス感染症は原虫の1種である膣トリコモナスによる性行為感染症のひとつです。
- トリコモナスというのは、ゾウリムシやミドリムシなどと同じ原虫の仲間です。
トリコモナス症はどのようにして感染するのですか?
- 性交渉によって感染しますが、自覚症状がほとんどないため、治療しないと何年も人に感染させることになります。
- 原虫は、膣分泌液、精液、外陰部にも生息するので口・肛門・尿を使った性行為も危険になります。
- また、性交渉で感染するだけでなく、原虫は湿ったタオル等でも1日程度生きるので、タオル、下着、シーツを介しても他の人に
感染することがあります。
- トリコモナスの感染のルートは女性→女性、もしくは男性→女性として感染しますが、男性の場合は女性→男性しか感染ルートは
ありません。
- 男性同士の性交渉が行われたとしてもトリコモナスの感染は起こらないというのが他の性感染症と異なる特徴です。
- なぜなら基本的にはトリコモナスは、膣に潜伏しているからなのです。
トリコモナス症の感染する場所はどこですか?
- 膣トリコモナスは、基本的には尿生殖路へ感染する性行為感染症で、最も多い感染部位は女性の尿道および膣です。
- 感染は感染粘膜に留まり組織の中には入っていくことはまず無い。
- この原虫はシストを生じず接触によって感染することからして、、性行為によってあたかも男性が媒介者のような役割を果たす、
性行為感染症と考えられる。
- しかし必ずしも性行為を伴うわけではなく、下着やタオル、便座あるいは風呂をまたぐ際や、出産時に母から感染する可能性もある。
- 日本では一般的に高温であるため問題ないと考えられているが、共同浴場で感染する危険性も皆無ではないので注意が必要です。
感染するとどのような症状が出るのですか?
- 男性の場合、前立腺炎を併発する場合が多く、トリコモナスは本来前立腺や精嚢に棲息し尿道に出てくることで
尿道炎を引き起こすとも言われており、また、膀胱炎、精巣上体炎、まれに包皮下に感染し亀頭包皮炎を起こすことがあります。
- 女性の場合、症状は非常に多様で、帯下(粘液性の膣からの排出物)の増加が最も多い自覚症状で、その他排尿障害
、外陰部のかゆみ、刺激感、悪臭などがあり、更に膣炎を起こすこともあり、この場合トリコモナス以外の菌との混合感染が
一般的にみられ、同時に感染した菌が悪臭の原因となります。
トリコモナス症を治療しないとどうなるのですか?
- トリコモナスに感染していながら治療をせずに放置していると、最悪、不妊症や早産等の原因になりかねません。
- 妊娠中に女性が感染すると、早期破水や早産を招くことがあります。
- 更に膣トリコモナスに感染している母親から生まれた新生児へと感染することがあります。
- 膣トリコモナスに感染している母親から生まれた女の新生児では、2%-17%で感染を起こすと言われています。
トリコモナス症の検査はどのような検査があるのですか?
- トリコモナス症は顕微鏡で病原原虫を観察することにより診断します。
- 膣から綿棒で粘膜を採り、スライドグラス上に塗り、ギムザ染色と呼ばれる染色法で原虫を染めて顕微鏡で見ます、感染していればトリコモナス原虫が確認されます。
- 男性の場合は尿沈渣や前立腺分泌物中に運動する虫体が検出されます。
- 男性で尿道炎のある場合は、尿道擦過による標本や尿沈渣で、トリコモナス検出検査が行われます。
- 女性の場合、特徴的症状のある場合診断は容易ですが、確定診断は膣に貯留する分泌物の顕微鏡検査、
あるいは培養検査によるトリコモナスの検出によって行われます。
トリコモナス症の検査はいつ受けたらいいのですか?
- 潜伏期間 5〜28日間 ですので、男性の場合は、ほとんど症状がありませんが、不安な行為の後、排尿時に不快感がある場合に検査を受ける必要があります。
- 女性の場合は、白または黄色の泡状または膿を含んだ悪臭を伴うおりものが出る、外陰部に強いかゆみがある、排尿、性交時に痛みが
ある場合に検査を受ける必要があります。
トリコモナス症の治療法はどのようにするのですか?
- 治療薬はニトロイミダゾール系薬剤(メトロニダゾールなど)が広く用いられます。
- 男性ではトリコモナスは前立腺にも存在するため経口投与が行われ、女性の場合でも尿路感染の可能性があるため経口投与が必要ですが、自覚症状の改善が早い
膣座薬による局所療法が併用されることもあります。
- 膣トリコモナス症は症状が治っても原虫が検出されなくなるまで完全に治療を行う必要があります。
- 個人差もありますが、性病トリコモナスは症状が出にくい疾患なので、治療をしなくても治った…と思い込んでいる方
も中にはいるようですが、一度感染した患者が何の治療もせずに自然治癒(つまり、病原体であるトリコモナス原虫が死滅)
することは、まず考えられません。
- 医師の指示通り薬を服用するなどして、医師が完治したと言うまで、勝手に治療をやめることは絶対にしてはいけません。
- 治療法としては、
- 男性:メトロニダゾール内服
- 女性:メトロニダゾール内服、また、メトロ二ダゾールの膣剤、またはその併用
- 基本的に医師が処方する薬剤と指示どおりの治療を行ってさえいれば2週間程度で治るといわれています。
- ※ 抗トリコモナス剤は、アルコールとの飲み合わせが悪いので、治療中は、男女とも禁酒する必要があります※
トリコモナス症はなぜ女性に多いのですか?
- トリコモナス症の原因とされるトリコモナス原虫は、性行為などを介して男性にも感染しますが、
男性(前立腺肥大などの症状がある方は除く)の場合は、排尿時に体外へ排出してしまうことも少なくないといわれています。
- 反面、男性に比べ性器の構造が複雑な女性の場合は、トリコモナス症の病原体であるトリコモナス原虫が、
一旦、膣内に侵入してしまうと、男性のようにはうまく排出されず、原虫が増殖してしまう傾向にあります。。
- そのため、一般的にトリコモナス症は、男性よりも女性に多い性行為感染症で、症状も女性の方が重くなるケースが多いようです。
トリコモナス症検査はパートナーと二人でなぜ受ける必要があるのですか?
- トリコモナス感染症は、性行為感染症でありピンポン感染を起こすことから、パートナーとともに治療することが必要です。
- 一方だけ治療しても、相手が感染していれば、再び相手から感染するピンポン感染(カップルの間で、お互いにうつし、
うつされをくり返すことに注意する必要があります。)
- パートナーの7〜8割は感染しているとの調査報告があることから、無症状でもいっしょに治療する必要があります。
トリコモナス症に感染しているとHIVに何故感染しやすいのですか?
- トリコモナスにより粘膜がタダレれて、防御バリアが破壊され、その場所からHIVの侵入がたやすくなるからです。
- HIV感染者の多いアフリカやアフリカ系アメリカ人での、HIV陽性者とトリコモナス感染者との関連についての研究から、
トリコモナス感染はHIVの感染率を2〜3倍に増加させている危険性が指摘されています。
トリコモナス症の感染予防はどのようにすればよいのですか?
- 性交渉において、最初から最後まできちんとコンドームを使用することによって、トリコモナス感染は予防できます。
トリコモナス症の現状は?
- 日本では女性の5〜10%、男性の1〜2%が感染しているといわれています。
感染しやすい状態があるのですか?
- トリコモナスが主に生育している膣内は、トリコモナスのような性行為感染症の原因になる原虫や細菌類が住めないように
酸性に保たれています。
- それは常在菌であるデーデル桿菌が膣内で乳酸を産生しているためですが、妊娠や生理時にはその酸性が弱くなり、その時期に
感染しやすいといわれています。
- そのことからして、妊娠時や生理時の性行為は出来るだけ控えるか、コンドームを正しく使用する必要があります。
1回の性行為での感染率は?
- かなり高い確率で感染すると言われていますが、正式な数値は分かりません。
何科を受診すればいいのですか?
written by 血液の鉄人
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