鼠径リンパ肉芽腫症について
鼠径リンパ肉芽腫症とは何ですか?
- 鼠径リンパ肉芽腫(そけいりんぱにくがしゅ)とは、性行為感染症(STD)のひとつで、クラミジアの一種のクラミジア・トラコマチス
という真正細菌の感染により起こる病気です。
- 淋病、梅毒、軟性下疳以外のもう一つの性病という意味で「第四性病」と呼ばれることもあります。
- ニコラ・ファーブル病とも呼ばれます。
- 現在、鼠径リンパ肉芽腫は、日本ではほとんど見られず、主に発展途上国に多く見られる性行為感染症です。
- 海外に出かけた人が、海外で感染して日本に持ち込むことがあり、日本でも少なからず感染者が見られることがあります。
鼠径リンパ肉芽腫と性器クラミジア症との違いは何ですか?
- 鼠径リンパ肉芽腫はクラミジアによって感染しますが、現在、日本の若者を中心に蔓延している性器クラミジア感染症、
単にクラミジアと呼ばれる性行為感染症と同じクラミジア属ですが、型が違うため性器クラミジア感染症とは違う病気として分類されます。
- 型が違うので鼠径リンパ肉芽腫に感染しても性器クラミジア感染症にはなりませんし、性器クラミジア感染症に感染しても
鼠径リンパ肉芽腫にはなりません。
- 鼠径リンパ肉芽腫を引き起こすのは、クラミジア・トラコマチスのうちのL型のみです。
- 性器クラミジア感染症を引き起こすのは、クラミジア・トラコマチスのうちのD〜K型です。
鼠径リンパ肉芽腫症の感染する場所はどこですか?
- 外陰部に感染して丘疹がびらん・潰瘍化します。
- びらん発生後1〜2週間ほど経過すると、発熱、頭痛、発疹等が認められるようになり、鼠径リンパ節に有痛性の腫脹
を認めるようになります。
感染するとどのような症状が出るのですか?
- 症状としては、大きく三期にわけられます。
- 一期(感染から約二週間)
- 男女ともに、性器に水疱や潰瘍が現れますが、軟性下疳とちがって、痛みを伴わないのが特徴です。
- 二期(一期から約三週間)
- 股のリンパが腫張し、感染した患部に穴が空き、そこから膿が流れます。
- 三期(感染から一年以上)
- 直腸や肛門のリンパにまで症状がひろがり、男女とも性器に象皮病のような腫張を生じ、この時、リンパ管の閉塞により、直腸狭窄などの症状が現れます。
鼠径リンパ肉芽腫症を治療しないとどうなるのですか?
- 治療をせず1年以上経つと、直腸や肛門部のリンパ腺まで症状が広がり、直腸や尿道の狭窄が起こり、女性の場合、
外陰部、肛門、直腸の潰瘍ができたり、大陰唇、小陰唇が象皮病様になることもあります。
鼠径リンパ肉芽腫症の検査はどのような検査があるのですか?
- 専用の細い綿棒状の物で分泌物を採取し、分泌物からのクラミジア抗原の検出、遺伝子検出方法が一般的です。
- 血液を採取して、血清抗体価を検査することもあります。
鼠径リンパ肉芽腫症の検査はいつ受けたらいいのですか
- 潜伏期間は、4〜30日(通常は7〜12日)で、 症状としては、最初に感染部位に疼痛のない小水疱、小丘疹が出現し、
その後鼠径リンパ節が無痛性多房性に腫脹し、膿瘍を形成後、自壊し瘻孔を形成します。
- 感染するような不安な行為の後、潜伏期間が過ぎる頃に上記のような症状が見られれば、直ぐに受診して検査を受ける
ことです
鼠径リンパ肉芽腫症の血液検査は、信頼性が低いと聞きましたがどうなのですか?
- 血液中のクラミジアに対する抗体を測定することから一般的にEIA法が用いられます。
- クラミジア全菌体を抗原とする方法と、抽出した種特異蛋白あるいは合成ペプチドを抗原とする方法があります。
- クラミジア抗体は感染初期には出現しないことが多く、治療しても陰性とならず、陽性反応が残存することから、
抗体測定法は診断の補助手段と理解して、この検査に頼ることはされるべきです。
鼠径リンパ肉芽腫症の治療法はどのようにするのですか?
- テトラサイクリン系、マクロライド系、ニューキノロン系の抗生物質を3週間程度投与することで治ります。
鼠径リンパ肉芽腫症検査はパートナーと二人でなぜ受ける必要があるのですか?
- パートナーの片方が感染していると、当然もう片方にも感染している確率が高いことから、
感染が解れば、二人で検査を受ける必要があります。
鼠径リンパ肉芽腫症に感染しているとHIVに何故感染しやすいのですか?
- 鼠径リンパ肉芽腫になることにより、性器や肛門粘膜がタダレ、粘膜の持つ感染防御バリアが破壊されて、
HIVに感染しやすくなるためです。
- さらに鼠径リンパ肉芽腫のほとんどにHIV感染がみられたとの報告が多くされています。
鼠径リンパ肉芽腫の感染予防はどのようにすればよいのですか?
- コンドーム無しの性行為で感染することから、コンドームを正しく使用することで予防可能です。
- 感染する時期は、相手が一期と二期感染の時です、三期になれば、感染者は性行為が困難な状態となっています。
- 患部が性器からリンパにかけて広いためコンドームでもカバーしきれない場合がありますから、
不特定多数のパートナーとの無防備な性行為や肛門性交などの危険な行為を慎むことです。
1回の性行為での感染率は?
- かなり高い確率で感染する可能性がありますが、正式な数値は分かりません。
鼠径リンパ肉芽腫の現状は?
- かつては性病防止法に挙げられていた(梅毒・淋病・軟性下疳に続く性病という意味で第四性病という名が付いた)
ほど多発していた性行為感染症のひとつでしたが、現在では極めてまれな性行為感染症で、日本国内で感染することはまず
無いと言われています。
- しかし、特に中南米などの発展途上国に出かけて、性行為で感染してきて、国内に感染を広めることがあります。
何科を受診すればいいのですか?
- 男性 皮膚科、性病科
- 女性 産婦人科、皮膚科、性病科
written by 血液の鉄人