アメーバ赤痢について
アメーバ赤痢とは何ですか?
- アメーバ赤痢は、以前は赤痢だと考えられていましたが、アメーバによって引き起こされるため、細菌感染症ではなく寄生虫症に
分類されています。
アメーバ赤痢の病原体は?
- 赤痢アメーバには栄養型と嚢子のふたつの形態があり,栄養型は運動性があり,大腸の組織などを食べて増殖し,大腸粘膜に集落を形成し,ときに血行性に移動し20〜30%に肝膿瘍などの腸外アメーバ症を起こします。
- 大腸にいる一部の栄養型が嚢子になり,便とともに排出され、排泄された栄養型は抵抗力が弱くて死滅しますが,嚢子は生き残ります。
- この嚢子が人から人へ直接に広がるか,食物や水を介して感染が広がります。
- 赤痢アメーバには病原種であるE.histolyticaと、非病原種のE.disparの2種類が存在します。
- E.disparはおとなしく大腸でいますが,Entamoeba histoltticaは大腸の粘膜上皮から粘膜下層で組織を破壊しながら増殖して潰瘍を形成、赤痢アメーバ症はこのEntamoeba histoltticaの嚢子感染により発症するとされています。
アメーバ赤痢の感染する場所はどこですか?
- 便中に排泄された赤痢アメ−バのシスト(嚢子)に汚染された飲食物などを経口摂取することで感染します。
- シストは胃を経て小腸に達し栄養型の原虫に変化し、分裂を繰り返して大腸に到達します。
- 感染者の10〜20%に症状がみられます。
感染するとどのような症状が出るのですか?
- 潜伏期は通常2〜4週ですが、数日〜数年にわたることもあります。
- 下痢、粘血便、しぶり腹、排便時の下腹部痛や不快感などの症状を伴う慢性腸管感染症で、アメーバ赤痢、アメーバ性大腸炎などの病型が
認められます。
- 典型的なアメーバ赤痢ではイチゴゼリー状の粘血便がみられ、数日〜数週間の間隔で悪くなったりよくなったりします。
- アメーバ性大腸炎の場合は、腹痛と下痢を主症状としますが、下痢の性状は血便、粘液便など多種多様です。
- 時に原虫は腸以外の臓器に浸入(腸外アメーバ症)し、肝臓のに膿瘍作るが最も多く、発熱(38〜40℃)、右季肋部痛、同部の圧痛、肝腫大、嘔気、嘔吐、体重減少、寝汗、全身倦怠などを伴います。
アメーバ赤痢を治療しないとどうなるのですか?
- 放置すれば多くの場合自然に症状が消退し無症状となりますが、再発を繰り返し、慢性化していきます。
- 赤痢アメーバによる組織の壊死が進行して、腸管穿孔による腹膜炎を起こすことがあります。
- アメーバ性赤痢の20〜40%に肝膿瘍を併発することから、下痢等の症状が無い場合でも、肝膿瘍が発症することがあります。
- 肝膿瘍では、右季肋部痛と発熱が見られ、治療しなくとも症状自体は軽快しますが、完全には治癒しないので、時々再発しつつ、
慢性化していきます。
アメーバ赤痢の検査はどのような検査があるのですか?
- 病原体の検出
- 1.糞便からの赤痢アメーバ栄養体の検出
- 病変部位(組織切片または膿瘍液)からの本原虫の検出など
- 2.病原体の遺伝子の検出
- 赤痢アメーバに特有な遺伝子配列の検出(PCR 法等)など
- 3.病原体に対する抗体の検出
- 患者血清からの赤痢アメーバに対する特異抗体の検出など
- ※便に夜検査の場合は、1回だけの検査に留めず、連続3日間程度の集中検査で検出精度を高める必要があります※
アメーバ赤痢の検査はいつ受けたらいいのですか?
- 発展途上国へ旅行して、生水や生ものを飲食し、帰国後下痢、粘血便、しぶり腹、排便時の下腹部痛や不快感などの症状を伴う症状が発現すれば直ぐに受診する必要があります。
- 肛門を愛撫したり、肛門に挿入したペニスをフェラチオをした後、下痢、粘血便、しぶり腹、排便時の下腹部痛や不快感などの症状を伴う症状が発現すれば直ぐに受診する必要があります。
アメーバ赤痢の感染経路は?
- アメーバ赤痢は、赤痢アメーバという原虫が人の糞便中に排出され、それに汚染された飲食物などを介して、口から感染します。
- 1970年代まではアメーバ赤痢の多くは輸入感染症の1つとして、海外流行地で赤痢アメーバに汚染された飲食物を食べた人が国内に持ち込んで感染する病気と考えられていました。
- 当時は、アメーバ赤痢は、赤痢(赤痢菌が原因)と同じように、消化器感染症として認識されていたため、感染ルートの調査も患者と食事を共にした接触者を対象にしていましたが、検査対象となった患者家族や職場の同僚などからはアメーバ赤痢の感染者は見つかりませんでした。
- 国内での感染が1.8倍、輸入例が1.5倍と、海外に比べてむしろ国内での感染が増えていた。
- 性的接触による感染が1.6倍、経口感染が1.4倍に増加し、男性における異性間性的接触を原因とするケースが2.1倍に増加しています。
- 更に最近では、症例数は少ないですが、性的接触による女性の感染者数が3.2倍と大幅に増加してます。
アメーバ赤痢の治療法はどのようにするのですか?
- 第一選択薬はメトロニダゾールですが、メトロニダゾールの腸管吸収が速いため、腸管内の虫体を完全に駆除できないことがあることから、テトラサイクリンあるいはフラミドを併用します。
- 症状が強いときは食物の経口摂取制限が必要となります。
アメーバ赤痢は何故性行為感染症に分類されているのですか?
- 本来アメーバ赤痢は、口から感染する消化器感染症ですが、オーラルセックスの多様化から、口で肛門を愛撫するリミング等の行為から感染する症例があえていることから、性行為感染症のひとつとして分類されています。
アメーバ赤痢に感染しているとHIVに何故感染しやすいのですか?
- アメーバ赤痢に感染していても、HIVに感染しやすくなるのではなく、アメーバ赤痢に感染している人は、多くの人とHIVにも感染しやすい危険な行為をしている人が、多いと言うことです。
1回の性行為での感染率は?
- 膣性交では感染することはありません。
- 口で肛門を愛撫することにより、相手が感染者で有れば、ほぼ100%感染します。
- また、肛門性交をして、その後ペニスを洗わずフェラチオをすることにより、相手が感染者で有れば、ほぼ100%感染します。
アメーバ赤痢の現状は?
- 感染者の多くは発展途上国に集中して分布しており、多くの先進国では、アメーバ赤痢は一般の人々の間には流行していません。
- 先進国での感染は、男性同性愛者、発展途上国からの帰国者、知的障害者施設収容者等に限定されています。
- 特に男性同性愛者間に流行する赤痢アメ−バ感染症は性行為感染症に分類され、他の性行為感染症の梅毒、HIV、HBV、性器ヘルペス
などを合併していることが多いです。
- 赤痢アメーバ感染症による全世界の死亡者数は毎年4〜7万人と推定されています。
- 日本のアメーバ赤痢患者数はね1990 年代に100〜200でしたが、2000年以降に急増し、2001年には400 を超え、この報告数の増加が感染症法施行による報告方法の変更によるものか、あるいは実際に発生が増加しているのかについては、現時点でははっきりとは分かっていません。
- 更に男性同性愛者にも多くみられ、日本での患者数は増加傾向にあります。
- 一方、女性の感染者の年齢層は男性よりも若く、1999〜2002年では25〜29歳にみられたピークが、2003〜2006年では20〜39歳に広がっており、患者数も1.9倍に増加する傾向にあります。
- 以前から風俗業で働く女性に赤痢アメーバ患者の存在が指摘されていましたが、東京都における調査ではさらに広まりつつあること
が報告されています。
- 日本での経肛門性交による感染については、100人の異性間中1%,120人の風俗営業の女性の20.4%,216人の同性愛中20.4%がアメーバの血清の抗体が陽性で有ったとの報告もあります。
- 更に日本の3大都市で同性愛者の56%がHIV感染者で,そうち45%の人に赤痢アメーバの症状が見られたとの報告もあります。
アメーバ赤痢の予防法は?
- アメーバ赤痢を含む人間の糞便に汚染された食物や水の摂取をさけること、すなわち不衛生な食べ物を食べないようにし、十分に加熱調理したものを食べることが重要です。
- 感染予防に有効なワクチンはありません。
- 経肛門性交による感染予防には、コンドームを使用して、行為の後コンドームに触れないように廃棄し、コンドームに触れた場所は
丁寧に石けん等で洗う必要があります。
- 肛門を口で愛撫することをやめる。
- 消毒方法としては、塩素の場合,細菌を殺すには十分な濃度でも赤痢アメーバの嚢子は殺せません。
- しかし、水を煮沸すれば嚢子は死滅します。
何科を受診すればいいのですか?
written by 血液の鉄人