1981年
- ニューヨークの数人の医師が新しい病気が免疫防御系を破壊し、男性同性愛者を冒し始めたとの疑念を表明。
- カリフォルニア大学ロスアンジェルス校のM.S.Gottliebが男性同性愛者に見られた6例の重症免疫不全例を初めて報告。
- サンフランシスコで最初のカポジー肉腫の診断が下され、この症例をCDC(米国防疫センター)に報告するが活用されず。
- CDCの『疾病と死亡週報』(Morbiditiy and Mortality Weekly Report:MMWR)に最初の公式発表。これによりエイズが初めての歴史表舞台に登場(6月5日)。
- ニューヨーク・タイムズに"41人の男性同性愛者に見られる珍しいガン"の見出しで初めて公衆に本疾患が紹介される(7月3日)。
- 当時CDCはエイズをKaposi SarcomaとOpportunisti Infectionの頭文字を取り"KSOI"と呼称していた。
- ヨーロッパにエイズが出現し始める。
- フランスで血友病患者のエイズ感染が始まる。
- WHO(世界保健機関)がエイズの患者・感染者の統計開始。世界の累積患者数381人。
1982年
- CDC内覧用記録にエイズは"性的な接触で伝染するウイルス感染による"と断言。米国の疫学者たちは一種のブラックユーモアでKSOIに感染しやすいグループを"4Hクラブ"と呼ぶ(Homosexual,Heroin abusers,Haitian entrants,Hemophiliacs)。
- CDCがこの疾患の根底には著しい免疫低下があるとし、Acquired Immune Deficiency Syndromeと命名、その頭文字を取り、"AIDS"の略号が使用され始める(それまでは限定的に、"ゲイ肺炎"、"ゲイガン"、"ゲイ関連免疫不全"、"ゲイ巻き添え症候群"と呼ばれていた)。
- CDCが濃縮血液第[因子製剤によるエイズ感染例を発表し、これによりエイズがウイルスによる疾患との証拠になる。
- 米国内で薬物常習者の間でエイズが激増し始める。
- CDCによりエイズの垂直感染が指摘。
- 年末になり米国の大新聞がエイズを取り上げ始める。
- 世界の累積患者数1,461人。
- 我が国初のエイズ報道:"「免疫性」を壊す奇病、米で広がる"(毎日新聞7月20日付)。
1983年
- CDCがエイズを定義、WHOも採用。
- WHO主催によるAIDSに関する初の研究会が開催(ジュネーブ)され、患者は3,000人を超え、発生地により伝染の仕方や患者の男女分布に差が認められると報告。
- FDAが同性愛者からの献血を中止するよう米国赤十字社に指示。
- パスツール研究所のL.Montagnierらがエイズウイルスを分離(Lymphadenopathy-associated virus:LAV)。
イギリス・ケンブリッジ大学のE.Karpasがエイズに感染した若い男性同性愛者の血液から分離したウイルスの電子顕微鏡写真を発表。
パスツール研究所がELISA法(Enzyme-Linked Immunosorbent Assay)による抗LAV抗体検査の特許を米国に申請(申請は正式に登録されるが、許可は1986年)。- CDCが過去5年間に輸血がエイズの発症の唯一の因子とされる39の症例を登録。
- 異性間性交渉によるエイズ感染の可能性が証明される。
- CDCがエイズ患者の処置を行う際には、血液の取り扱いに注意するよう、歯科医・葬儀屋・病院・医療関係者に指示。
- 夏以降、ヨーロッパでエイズ流行の事態を憂慮する記事が出始める。
- 後天性免疫不全症候群(Acquired Immune Deficiency Syndrome:AIDS)が『インデックス・メディクス(医学総索引集)』に収録される。
- 世界の累積患者数4,490人。
- 厚生省がエイズの実態把握に関する研究班を設置
1984年
- NIH(米国予防衛生研究所)のR.Galloらエイズの原因ウイルスとしてHTLV-V(Human T cell lymphotropic virus-V)を分離。
米国カリフォルニア大学のJ.Levyらエイズの原因ウイルスとしてARV(AIDS associated retrovirus)を分離。- イギリスでエイズ患者を採血した注射器による針刺し事故により、看護婦がエイズに感染と報告(医療関係者で最初の感染事故)。
- NIHがELISA法によるエイズ抗体検査の特許を申請(1985年に認可)。
- エイズウイルスの病因論的役割が認められる。
- この頃より赤道アフリカ地帯で娼婦を媒体としたエイズの爆発的流行が始まる。
- WHOが欧州10ヵ国で発生したエイズ患者は1983年の2倍になったと発表。
- 世界の累積患者数10,575人。
- 在日中のフィリピン人女性がHIV抗体養陽性と判明。わが国の抗体第1号となり、エイズパニックが起こる。
- 厚生省がエイズ臨床診断の手引きを作成。
1985年
- エイズウイルスの遺伝子の核酸塩基組織が解明され、LAVの全塩基配列は9193塩基、HTLV-VとARVでは95%が一致しており、これらは同一ウイルスの変異株と判明。
- 米国でNIHGが申請した最初のELISA法によるエイズ抗体検査キットが認可。
- 米国で全献血者のHIV抗体検査を実施。
- 米国でエイズ患者を治療中の看護婦が注射針を誤って刺しエイズ感染(最初の報告)。
- オーストラリアで非配偶者間人工授精で女性4人がHIVに感染(世界最初の事例)。
- オーストラリアエイズ研究班が乳幼児の母乳から世界最初のHIV感染症例を発表。
- 韓国で初のエイズ患者発見。
- 第1回エイズ国際会議開催(アトランタ)。
- CDCが"蚊や昆虫"からのエイズは感染しないと初めて発表。
- NCIがエイズ患者の涙からHIVを検出、涙に頻回に接触すると感染の可能性ありと報告。これをうけCDCが眼科医に診察時の手袋使用を勧告。
- NIHがエイズ感染者の30%に脳機能障害が認められると発表。
- WHOがアフリカに於けるエイズの診断基準設定。
- 世界の累積患者数21,291人。
- 厚生省エイズ調査検討委員会が米国在住の男性同性愛者を日本人初の患者と認定。
- 厚生省は各方面からの献血時のHIV抗体検査実施の求めに対して、"現在の検査法は偽陽性反応が多いことと財政的な問題"で、現時点では検査の必要なしとの見解を示す。
- 採血でエイズが感染すると誤解し全国日赤血液センターで献血激減。
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1981年〜1985年の年表│エイズの歴史|新 医学と切手の極意