医事通信(2010年03月08日号)
成人T細胞白血病(ATL:Adult T-cell leukemia)の母子感染の増大に対して厚生労働省は、全妊婦の検査を実視するよう体制を見直す!!
成人T細胞白血病は、九州に感染者が多い疾患です。
この疾患は、HTLV-1(Human T-lymphotropic Virus Type I:ヒトT細胞好性ウイルスT型)が引き起こす病気です。
また、このウイルスは母子感染で子供に感染することが知られています。
その為に妊娠時にHTLV-1抗体の検査を行い感染の有無を判断する必要があります。
しかし、現実は全ての妊婦に検査は実視されていません、そのことから、厚生労働省の特別研究班が、母子感染予防のため全国一律で全妊婦に感染の有無を調べる抗体検査をすべきだとの報告書をまとめました。
この報告書は、2010年3月末にも同省に提出される予定です。
国は従来の「全国一律の検査や対策は不要」とする1990年度の旧厚生省研究班の提言を受け、感染予防対策を地方自治体の判断に委ねてきた経緯がありますが、今般20年ぶりに方針転換し、医療現場や自治体に対策を促すことになります。
別の研究班の昨年3月の報告でHTLV-1の感染者が全国で約108万人(九州・沖縄が全体の約46%)と推計され、更に関東など大都市圏で増えていることが明らかになったため、厚労省が昨年7月に特別研究班を設置して、主な感染経路である母乳を通じた感染対策について研究してきた経緯があります。
報告書には、「HTLV-1感染者が全国に拡散しているため、妊婦に対する抗体検査を全国で行い、母子感染を予防する時期に来ている」と提言されています。
HTLV-1抗体検査は、B・C型肝炎ウイルス、HIVや梅毒などと同じように妊婦健診の血液検査項目に加え、妊娠32週ごろまでに抗体の有無を調べるとしています。
更にHTLV-1の感染が疑われる場合は、確認検査をして感染が確認されれば、医師らがカウンセリングを行い、母乳による母子感染が起こり得ることを説明し、母乳を与えず粉ミルクだけで育てるか、生後3カ月以内の短期授乳を勧めるという内容になっています。
また、この報告書には、感染が判明した際の妊婦への説明方法や医療関係者用の手引き、ATLやHTLV-1についての解説なども収録し、2010年4月以降に全国約1500の産科施設に配布される予定となっています。
☆成人T細胞白血病(HTLV-1)に関しての解説は、『新医学と切手の極意』の『知識の窓』の『成人T細胞白血病、HTLV-1について』をご覧下さい。
written by 血液の鉄人
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